【OSI参照モデル その3】OSIはもう要らない? TCP/IPモデル概要とOSI参照モデルとの比較

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この記事のポイント
  • 実際のネットワーク機器はOSI参照モデルではなくTCP/IPモデル

  • TCP/IPモデルは4層構成のシンプルモデル

  • OSI参照モデルも概念は押さえておくべき

OSI参照モデルの内容は理解したわ。色々なネットワーク機器がこれに沿って作られているなら動きも大体分かるわね。

チャーチルさん

ポン先生

実は現実のネットワーク機器がOSI参照モデルの概念そのままに作られているかと言うと・・・

本記事ではOSI参照モデルとの比較で登場するTCP/IPモデルについて解説します。実際に使われているシンプルなモデルなので、OSI参照モデルとの違いやポイントを押さえておきましょう。

TCP/IPモデル

OSI参照モデルの実用性

先に結論を言うと、実際のネットワーク機器はOSI参照モデルに沿って実装されていません。実際にはTCP/IPというモデルが利用されています。OSI参照モデルはネットワークプロトコルのモデル化はできたものの、仕様の完成に時間がかかった、仕様が複雑すぎた、等々の理由からネットワーク機器の仕様としてはあまり普及せず、代わりにTCP/IPモデルが普及しました。

TCP/IPモデルとは

TCP/IPモデルはDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency, 国防高等研究計画局)が作成したモデルです。
※OSI参照モデルを作成したのはISO(国際標準化機構)

TCP/IPモデルは以下のような4つのレイヤで構成されるモデルです。

TCPIPモデル

OSI参照モデルと比べるとレイヤが少なく非常にシンプルになっています。これが非常に特徴的で、OSI参照モデルよりも実際の機能として落とし込みやすく、実用的と言えます。

また、それぞれのレイヤがOSI参照モデルのそれに相当する機能を持っており、機能面での比較もし易くなっています。

いずれにしても「通信に必要な機能や処理を分けて考える」という点は共通しておりTCP/IPの方がシンプルで現実に即していると言った理解で問題ありません。

次からは各レイヤの役割を見ていきましょう。

ポン先生

ちなみに単に「TCP/IP」と言った場合、

・TCP/IPモデル全体を指す場合
・TCP、IPの2つのプロトコルを指す場合

の2つがあるので、どっちの事を指しているかは前後の流れから理解する必要があるね。

ネットワークインターフェイス層

ネットワークインターフェイス層はOSI参照モデルのL1~L2に相当します。具体的にはハードウェアが通信するための層で、デジタルデータ⇔電気信号間の変換やセグメント内通信を担います。例えばイーサネット(有線LAN)、Wi-Fi(無線LAN),光回線の接続等があります。またPPPといったプロトコルもネットワークインターフェイス層に属します。

インターネット層

インターネット層はOSI参照モデルのL3に相当します。複数のネットワークセグメント間を中継し通信相手にデータを届ける機能を持っています。ネットワーク機器としてはルータを設置し中継します。また、プロトコルとしてはIPがあります。

トランスポート層

トランスポート層はOSI参照モデルのL4に相当します。機能としては通信の品質担保です。通信中にデータの欠損が出てしまった場合や、失敗してしまった場合を想定し正確に届いているか確認したり、失敗したときは再送するといった仕組みを備えています。プロトコルとしてはTCPがあります。また、ストリーミングなどデータの正確性よりも速度を重視するため上記のような機能を省いたUDPも代表的なプロトコルです。

アプリケーション層

アプリケーション層はL5~L7に相当します。アプリケーションそのものに加え、データのフォーマットやお作法を定めています。プロトコルの数も多く、例えば普段WEBブラウザで利用しているHTTPや、データの転送を行うFTP、メール送信で利用するSMTP等多岐に渡ります。

とは言えOSI参照モデルも大切

上記の通り実際のネットワーク機器の実装としてはTCP/IPが採用されています。では、OSI参照モデルはもう不要なのでしょうか?

実際はそうとは言い切れず、今でもその考え方は引き合いに出され、ネットワークエンジニアの間ではOSI参照モデルに沿った形で設計を考えることが多いため概念自体は理解しておくべきです。

ネットワーク機器のカタログ等を見てもはっきりと「L2スイッチ」、「L3スイッチ」などと記載されており、それくらい一般的になっています。正確には、みんなの頭の中はOSI参照モデル、機器の中身はTCP/IPモデルという少しチグハグな状態ですが、現実的にはそうなんだ程度の認識でOKです。
※また、本サイトでも基本的にはOSI参照モデルに基づいて解説しています。

ネットワークエンジニアを目指すならCCNAを取得しよう!

CCNAとはCisco社のメーカ認定資格です。CCNAの取得はネットワークエンジニアの基本的な知識Cisco製品の理解の証明になります。

特定メーカの資格で役に立つの?実際には他メーカの機種も扱うんじゃないの?

チャーチルさん

ポン先生

確かに業務上Cisco以外の機器を扱うことはあるだろうけど、最初にCiscoを勉強しておくと他の機器も理解しやすくなるんだ。

Ciscoは数あるネットワーク機器メーカの内の1社ですがディファクトスタンダードと言われています。つまり業界標準として位置付けられており、他メーカ機種でもCiscoのコマンドライン等を参考にしている事が多いです。そのため初見の機器でもCiscoと設定方法が似ており、「大体は分かる」なんてケースも多々あります。ネットワークエンジニアとしてはCiscoの学習はむしろ必須と言えるレベルでしょう。

また、Ciscoの資格と言っても独自仕様や製品の話だけでなく、ネットワークの一般的な知識も必要です。Cisco製品と言えベースはネットワークの標準規格に基づいて設計されており、CCNA取得でネットワークの一般的な知識も習得可能です。

上記理由からCCNAは非常におすすめの資格です。ネットワークエンジニアとして本格的に活躍したいのであれば是非チェックすべきでしょう。

【CCNAとは】難しい?勉強は?Cisco資格の登竜門 基本解説

まとめ

ポイント
  • 実際のネットワーク機器はOSI参照モデルではなくTCP/IPモデル

    • OSI参照モデルは複雑過ぎて普及しなかった

  • TCP/IPモデルは4層構成のシンプルモデル

    • ネットワークインタフェース層

    • インターネット層

    • トランスポート層

    • アプリケーション層

  • OSI参照モデルも概念は押さえておくべき

    • メーカのカタログやエンジニアの設計ではまだまだ利用する

今回はOSI参照モデルと良く比較されるTCP/IPモデルについて概要を解説しました。実際のところ普段の設計や構築、運用で使うかと言うと微妙ですが、ネットワーク機器の実装としては利用されているので、ポイントは知っておいて良いかと思います。個人的には階層が纏まってスッキリしているのも分かりやすく、コンピュータを設計する側の立場になれば、シンプルな考え方で設計したいというのも納得でしょう。(普段のネットワークエンジニアの仕事目線で言えば、逆にOSI参照モデルの方を分かっていて欲しい所ではあります。)