【ネットワーク機器】メーカシェアと機器選定について

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ネットワーク機器を選定・提案することになったのだけど、どのメーカの機種を選べば良いのかしら?そもそもどんなメーカが主流なの?

チャーチルさん

ポン先生

OK!今日はどんなネットワーク機器メーカがあるかまとめてみよう!

企業用ネットワーク機器となると家庭用では聞いたことの無いメーカも複数存在します。どんなメーカがありどれくらいのシェアを持っているのか、どういったポイントで機器選定すればよいのかざっくりイメージだけでも掴んでみましょう。

ネットワーク機器シェア

まずはどんなメーカがあってどれくらいのシェアを持っているか確認してみましょう。

この章の項目
  • 日本国内全体感 →Cisco強い
  • スイッチ/ルータ →Cisco強い
  • 無線LAN →Cisco強い
  • UTM →Palo Alto, Cisco, Fortinet強い

日本国内全体感 →Cisco強い

まずは日本国内におけるシェアを見てみましょう。ここではIDCのデータを参考にしています。IDCはIT分野の調査などをてがける企業です。(日本法人はIDC Japan)

国内NW機器シェア(2020)

出典:IDC

上記はスイッチ、ルータ、無線LAN機器の国内機器市場に基づいた2020年のベンダーシェア状況です。見ての通りCiscoがメチャクチャ強いです。ざっくり国内のネットワーク機器という括りで言うと半分程度がCiscoとうことになります。

なお、統計情報として見る場合は以下ポイントに注意が必要です。

統計情報を見る時の注意点
  • 一社の調査結果だけではそれが絶対的に正しいとは言い切れない

  • 費用ベースでの比較であって機器台数ベースでのシェアの話は別

  • スイッチ、ルータ、無線LAN以外にもネットワーク機器はある

ですがざっくりの全体感を掴む意味ではそこまでブレないと思います。それほど企業のネットワーク機器=Ciscoというイメージはかなり強いです。

2位以降はNEC, Allied Telesis, Yamaha, HPEと続きますがCiscoと比較するとその差は大きく、数字だけで言えば「CiscoかCisco以外か」の状態です。

データセンターで他社のラックが目に付く事があるけど確かにCiscoは多い気がするね。

チャーチルさん

ポン先生

Ciscoは台数も多いけど機器費もそれなりの値段だから金額ベースのシェアを押し上げる一因になっているのかもしれないね。

スイッチ/ルータ →Cisco強い

それでは具体的な機種毎にシェア状況を見ていきましょう。
※以降は日本国内ではなく世界全体でのシェアなのでその点はご承知おきください。

NW機器シェア(SW,RT, 2021-2Q)

出典:IDC

まずはスイッチ/ルータ部門でが、やはりCiscoは非常に強いです。Ciscoのスイッチと言えばCatalystシリーズ(最近のCatalystシリーズはスイッチ以外の機種も含んでいる)、ルータであればCisco ISRシリーズなど企業でもお馴染みの機器がラインナップされています。

特にスイッチ分野でのシェアには大きなアドバンテージがあります。スイッチはとにかく台数が多いです。ユーザが増えても拠点のファイアウォールやWANルータの台数は変わらないですが、スイッチはどんどん増えて行きます。

また無線LANと比較すると、無線LAN機器(アクセスポイント)は無線デバイスを利用する場所にのみ設置するのに対し、スイッチは拠点でもデータセンターでもネットワークがあれば、ほぼ100%設置するので出荷台数が多くなります。

スイッチ市場でのシェアはCiscoのネットワーク機器シェアの大きな柱と言えるでしょう。

次点はHuawei, Arista, H3C, HPEと続きますが国内でよく見る機器としてはHPEの印象があります。HP(Hewlett Packard)に関してはPCやサーバのイメージが強いかもしれませんが、2015年のAruba Networks買収を皮切りに今ではArubaシリーズを見る機会が多いです。

無線LAN →Cisco強い

無線LANの市場も見てみましょう。

NW機器シェア(WLAN, 2021-2Q)

出典:IDC

無線に関してもCiscoは強いです。Ciscoが以前から販売していたAironetシリーズ(現在はCatalyst9100シリーズ)のアクセスポイントに加え、2012年に買収したMerakiのクラウド管理型アクセスポイントも並行して展開しており、適材適所に提案する事が可能です。

Aironetの時代から強かったというのもありますが、アクセスポイントはPoEスイッチ(LANケーブル経由で給電できるスイッチ)とセットで検討・導入する事も多いためやはりスイッチ分野で大きなシェアを取っているCiscoの強みが活かされています。

次点ではHPE/Arubaがシェアを取っています。Arubaは元々無線アクセスポイント製品で定評があり、HPEが買収した後も一定のシェアを獲得しています。

ポン先生

POEスイッチとアクセスポイントのメーカを合わせないといけない!という事ではないので一応補足だよ。

UTM →Palo Alto, Cisco, Fortinet強い

ファイアウォールなどのセキュリティの分野はどうでしょうか。

NW機器シェア(UTM, 2021-2Q)

出典:IDC

ここはCisco一強では無く、いくつかのメーカに分かれています。10%以上のシェアを誇るメーカに絞っても3社あります。

UTM上位3社
  • PAシリーズを販売するPalo Alto Networks社
  • Firepowerシリーズを販売するCisco Systems社
  • Fortigateシリーズを販売するFortinet社

PAシリーズは費用がかかる分、L7レベルでのパケット検査が可能など高機能・高品質で定評があるファイアウォールです。
Firepowerは少し前のASAシリーズのOSも動くファイアウォールです。クライアントVPNで利用されるAnyConnectも動作するので重宝されるファイアウォールです。
Fortigateは安価な割に大体の機能は有しており非常にコストパフォーマンスの高いファイアウォールです。

ここは各メーカの特色が分かれており、シェアもバラツキがあります。絶対的1社という訳では無いのがスイッチや無線LAN製品とは違った状況です。

ポン先生

ここまで見たスイッチ/ルータ・無線・ファイアウォールそれぞれのシェア状況は世界全体での情報だから国内で見れば最初のグラフの通りNECやYamahaなんかも入ってくるよ。

それにしても世界全体のシェアで見ると日本のメーカは上位に入らないんだね。

なんだか悲しいねぇ(;_;)

チャーチルさん

機器選定ポイント

では、実際に機器を提案する時はどういった観点で選べば良いでしょうか。何点かポイントを挙げます。

この章の項目
  • 顧客側の要望を確認
  • 自社(SIer側)の方針を確認
  • メジャーなメーカを選定するメリット
  • それでも新しい機器も触ってみたい
  • 結局何を選べば良い?

顧客側の要望を確認

まずは顧客側の要望を確認しましょう。ここで重要なのは顧客の言うことをそのまま鵜呑みにするのではなく、要点を抑えて一番マッチする機器を提案する事がSIerの仕事ということです。

例えば顧客から、

予算が少ないので機器が安いA社スイッチを提案して欲しい

と要望をもらったらSIerとしてはどうするのが良いでしょうか。上記の顧客の真意は「A社スイッチは素晴らしいからぜひ導入したい」ではなく「スイッチの費用をなるべく抑えたい」という事です。顧客が知っているメーカの中で安いのがA社だったので提案をたまたま依頼してきたのかもしれません。であれば同等機能の他社スイッチの費用を確認して、

保守費用まで含めるとB社スイッチの方がトータルで安いのでオススメです

という提案に持っていけば顧客要望も満たしており満足度も高くなるかもしれません。

上記はあくまで一例で、本当は「元々A社スイッチは使い慣れているのでA社を指定した」という意図も含まれているのかもしれません。重要なのは表面上の依頼部分だけを鵜呑みにしないことです。顧客の課題や要望の真意を確認した上でそれを実現する方法はないかを良く考え、具体的な機種選定に移りましょう。

自社(SIer側)の方針を確認

自社の方にも何かしら都合があるかもしれませんので確認が必要です。まず、SIerの種類の一つにメーカ系SIerがあります。

(その会社に勤務している人からすれば言われるまでもないですが)メーカ系SIerの場合、親会社の機器しか扱えません。メーカ系かそれ以外のSIerかは機器選定においては大きな分かれ道になります。

その他、例えばメーカとのパートナー契約のために会社から特定機種の販促を指示される場合もあります。(xx台以上の販売でゴールドパートナー契約等)

SIerが売りたいモノと顧客が買いたいモノが一致していれば良いけど、そうじゃ無かった場合は・・・仕事って難しいんだね(・。・;

チャーチルさん

メジャーなメーカを選定するメリット

ある程度の規模の顧客であれば上記で挙げたような比較的知名度やシェアが高いメーカの機器を提案することが多くなると思います。もちろんマイナーな機器がゼロという訳では無いですが主に以下の理由でメジャーな機器の方が多くなります

タイトル
  • (誰も知らないようなメーカよりは)顧客承認を得やすい
  • メーカサポート体制が充実している
  • インターネット上のナレッジが多い

(誰も知らないようなメーカよりは)顧客承認を得やすい

顧客担当者レベルで見ても普段使っているメーカや知名度の高いメーカなら話は早いです。また、最終的な決済権を持っている上司が必ずしもメーカ事情に詳しいとも限りません。Ciscoくらいは知っているかもしれませんが、マイナーなメーカを提案した場合そもそもの部分から説明が必要ですし、決済が降りるまでに時間がかかってしまう事もあるでしょう。

メーカサポート体制が充実している

  • (A)今年からネットワーク機器市場に参入したベンチャー企業
  • (B)20年以上世界中で販売を続けている老舗メーカ

どちらの方がサポート体制が充実していそうかは明らかですよね。厳密にはメジャーかマイナーかというだけではなく、資金力やサポートをどの程度重要視しているか等指標はありますが、いずれにしても上記のような極端な例であれば(B)の方が良さそうなのは言うまでもないでしょう。

「サポート」と言っているのは主に問い合わせに対する回答や機器故障時の交換など保守業務がメインになります。そのため実際には保守ベンダーの体制やスキル次第で良くも悪くも見えます

保守契約

ではメーカは何もしないかと言うとそうではなく、保守ベンダー(販売店)に対する製品の説明・教育や保守ベンダー窓口⇔メーカの連携等あります。特に保守ベンダーだけでは技術的に解決できない事案や、Bugの修正等メーカの開発部隊の対応が必要なケースもあります。

そういったケースにおいてはメーカ側の迅速な対応も求められるため、メーカ側の体制も非常に重要なポイントになります。

インターネット上のナレッジが多い

エンジニアとしてはメーカや販売店の公式ドキュメントを参照すべき・・・なのですが欲しい情報が記載されていない・書き方が曖昧・分かりにくい等々良くあります。不明点があれば最終的な裏取りは問い合わせが必須ですが、とりあえず仮情報でも良いので今すぐ知りたいという場面もあります。

そこでGoogle先生にお尋ねになると、同じような課題に直面し解決した先人の知恵が載っていることもあります。当然、メジャーな機器の方が扱ったエンジニアも多いので情報量も多くなります

特に障害時など急いでいる時ほどピンポイントで情報が必要だったりするのでそういった時に役に立つ(可能性がある)でしょう。

ポン先生

ただし公式以外の、特に個人サイトは内容が間違っている可能性もあるから注意だね。あくまで基本は公式サイト、それ以外は参考程度に考えておくのが良いだろうね。

また、海外メーカだと公式ドキュメントでも日本語訳が間違ってる場合があるので情報ソースとしては英語のドキュメントが一番信用度が高いね。

って言いつつこのサイトももちろんメーカ公式では無いけどねw

チャーチルさん

それでも新しい機器も触ってみたい

とは言え、ずっとメジャーな老舗メーカの機器だけでも面白みが無いですよね。同じ機器ばかり扱っていてもエンジニア個人としても会社としても成長は止まってしまいます。また今は良くても数年したらそのメーカのシェアが下がる可能性もあるので少しでも新しい製品に手を伸ばすのも悪く無いです。

ただし、初めての製品の導入となると、顧客側も疑心暗鬼になります(普通は実績のある機器を導入したいと思うので)。そのあたりは顧客側が新製品に理解・興味がないと中々難しいですがチャンスがあれば自身の成長にも繋がるのでチャレンジしてみましょう。

結局何を選べば良い?

色々書きましたがこのサイトの結論としては、「顧客のためになる機器を選定すべし」です。”顧客側の要望を確認”でも触れましたが、言われた事をただやるのではなく、顧客の課題解決や要望実現に向けて一緒に進む事にSIerの価値があります

顧客AにとってはCiscoが良いのかもしれませんし、顧客BにとってはHPE/Arubaが良いかもしれません。顧客毎に重視している事が費用なのか、機能なのか、目新しさなのか、メーカのネームバリューなのか様々です。

機器の世界シェアに沿って盲目的にCiscoが絶対良いと言うつもりも無いですが、かと言って導入後のサポート責任を果たせないのであればマイナーメーカを選ぶ理由もありません。

特に顧客側の要件が無ければ、機器シェア上位層から得意なメーカを選ぶのが確実ですが、SIerの本質としては上記の通りだと思うので機器選定時は意識してみてください。

まとめ

ポイント
  • ネットワーク機器のシェアはCiscoが強い

  • 顧客要望の真意を捉えて機器選定すべし

  • 機器に関する自社方針も確認しておく

  • メジャーなメーカの方が提案~保守まで無難な可能性が高い

  • 新しい機器はチャンスがあれば挑戦

現在一定数のシェアを獲得しているネットワーク機器メーカの紹介と、具体的に機器選定・提案をする時のざっくりなポイントをまとめました。設定は後からでも変えられますがハードウェアは一度買うと5年+α程度は固定です。そのため機種選定にはその年数分の責任が伴います。運用面や使い勝手もそうですが、モノによっては毎年のライセンスや保守の更新費用もかかります。決して導入時だけ切り抜けられれば良いということでは無いので、何が顧客のためになるのか十分検討した上で機器は選定しましょう。