【仕事】顧客タイプとSIerに求められること

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この間ガッチリ説明資料作って顧客に説明したのだけど、全然伝わらなくって。。。資料自体は問題無いはずなんだけどなぁ。。。

チャーチルさん

ポン先生

相手はどんな人で、具体的にどんな説明をしたんだろう?ちゃんと相手の事を想定して準備していたのかな?

顧客がSIerに求めていることは何でしょう?ITシステムの構築や運用?確かにそうなのですが顧客によってタイプがあり、求めるものが違います。何を求めているか分かっていないとSIerとしても動きにくいですし、顧客の高い満足度も得られません。この記事では顧客タイプと求めるものについて大きく分けて2種類説明します。顧客担当者と直接会話するエンジニアにとっては必見の内容になっています。

顧客担当者のレベル

ここで言う顧客担当者とは情シスの担当者のことです。社内ITシステムの構築や運用などあらゆる面倒を見ています。一般的に業務でPCや何かしらのシステムを利用するケースは多いため、情シスは会社経営の根幹に関わる部門とも言えるでしょう。

一方、『担当者』と言ってもそれぞれレベル感は異なります。専任で高い専門的知識を持っている人、複数業務兼任で広く浅くやっている人、一応担当だが全く知識のない人、等々その会社の事情や個人のキャリアによって様々です。

SIerのエンジニアとしては早期に顧客担当者のレベル感を見極めることが重要です。なぜかと言うとSIは各タイミングで顧客⇔SIer間の合意が必要だからです。例えば何かしらの作業をやるにしても、『内容説明→議論→合意→作業実施』とプロセスを踏んで行きます。一般的にはSIer側の独断で作業することはありません。(もしかしたら中にはそういった企業もあるのかもしれませんが^^;)

そのため粒度の違いはあれど顧客担当者側にも内容を理解してもらう必要があるのです。

例えばルーティングのルの字も知らない顧客担当者に『OSPFコスト値の及びプライオリティ値の見直しを実施します。』と言っても全く伝わらないでしょう。

ここはもう少し噛み砕いて、『ルータが故障しても自動的にネットワークが切り替わってユーザの業務が止まらないような調整を行います。』と言ってあげれば少なくともルータを弄ること、それによって冗長性が担保される事は伝わるでしょう。相手のレベルに応じて言い方は考える必要があるということです。

ものすごくざっくり言うと、空気を読むとか察するとかそんな事に近いね。相手の理解度ガン無視で、自分の言いたい説明だけするエンジニアとかたまに居るけど、結果相手に伝わらなかったら意味無いしね。。

チャーチルさん

タイプ別攻略法

顧客担当者のレベルがどうであれ、SIerへ仕事を依頼する事は事実なので、どういった目的で、何を求めているのか、知っておく必要があるでしょう。例えば構築案件を依頼する場合、大きく分けると以下2タイプです。

この章の項目
  • タイプ1:能力的に自前構築できるが外部SIerへ依頼

  • タイプ2:能力的に自前構築できないので外部SIerへ依頼

厳密には中間くらいの位置で、大体は自前で構築できるが部分的に不明点が有るのでSIerへ依頼するパターン等々細かい話はありますが、大枠としては上記2タイプを把握しておけば大丈夫です。

タイプ1:能力的に自前構築できるが外部SIerへ依頼

このタイプの顧客から求められるのは以下のポイントです。

タイプ1:求められるポイント
  • 顧客担当者の実現したい内容を実現すること
  • 高いスキルやナレッジをもって、より良い提案や指摘をすること

顧客担当者が自身で構築・運用経験がある等実践経験があれば自前での構築も可能でしょう。しかし能力的にできるからと言って実際に自前でやるかどうか別です。例えば顧客社内メンバーは忙しく新規案件をやる時間がない(稼働が足りない)、会社として構築案件は全て外部SIerへ委託する方針である(アウトソーシング)、といった理由です。

案件によっては、まるっと全て依頼することもあれば、設計だけ顧客側で対応しSIer側は作業やドキュメント作成を行うと言ったパターンもあります。

基本的にはSIerが積極的・能動的に動くべきですが、顧客担当者によってはSIerへ対しかなり細かく指示を出したり、案件管理を徹底する人もいます。これは顧客担当者が案件推進や設計について熟知しているからこそとも言えます。SIerエンジニア個人の感覚で言えば合う・合わないはありますが、そういったタイプの人も居るということです。

ポン先生

これは別に顧客→SIerの細かい指示が鬱陶しい、良くないということでは無く、顧客担当者の経験値、スキルセット、性格によって粒度が変わるので相手のタイプを見極めよう、という事だね。

基本的に顧客→SIerへ対しやって欲しいことは明確なパターンが多いので、まずはそこに応える事が最優先ミッションになります。これは技術力だけでなく、顧客担当者の想定を確認する、場合によっては顧客担当者の頭の中のイメージを資料に起こし内容を議論するといった所から必要です。単純に機器の設定をできる、コマンドを知っているという事だけなく順序立てて築く力が必要になります。

こう書くと、言われた事を忠実に実行すれば良いと思うかもしれませんが、そうでもありません。皆さんが顧客担当者側の立場だったらどうでしょう?指示した通りに働き、結果として出来上がるものが同じなのであれば、費用の安いSIerへ依頼すれば良い、となりませんか?実際そう考える顧客担当者も一定数います。

これは良い悪いではなく、アウトプットが同じであればコストの安い方へ・・・と考えるのも納得ですし合理的です。もちろんSIer側が費用の安さを売りに勝負するのであればそれも良いでしょう。

しかし個人的には、SIerの独自性や価値はそこでは無いと考えています。ITのプロフェッショナルとして培って来たスキルやナレッジを目の前の顧客のためにアウトプットすることがSIerとしての本当の価値ではないでしょうか

例えば、顧客側が技術的に間違った方針で検討していれば指摘してあげる、より良い方法や構成があれば提案すると言ったような事はSIerにしかできません。それにより軌道修正できれば顧客側も将来的な損失を防ぐ事ができ、『このSIerへ依頼して良かった』と感じる事もできるでしょう。

指摘する瞬間自体は短い時間なので、案件全体の時間からすれば大した量では無く+α位な内容に見えますが、こうした+αに期待しているという顧客担当者も実は多かったりします。顧客担当者に言われるがまま実行するのではなく、これは本当に正しいのか?他にもっと良い方法は無いのか?という問いかけは常に忘れないことが大切ですね

プロとしての価値かぁ・・・確かにあまり意識していなかったけど、相手の立場になって何に困っているのか、何を求めているか考えることはとても重要だね~

チャーチルさん

タイプ2:能力的に自前構築できないので外部SIerへ依頼

ここのタイプの顧客から求められるのは以下のポイントです。

タイプ2:求められるポイント
  • なるべく分かりやすく噛み砕いて伝える

  • SIer目線でのオススメを提示する

小規模企業でIT担当者が居ない、専門スキルを持った社員が退職してしまった、新しいシステムを取り入れたいが社内に経験のあるメンバーが居ない等々能力的な意味で対応できない場合、必然的に外部SIerへ依頼する事になります。これは『良く分からないので専門家の方お願いします~』という事なので分かりやすいパターンですね。

一方、顧客担当者側に全く知識が無い場合、SIef担当者としては苦労します。というのも前述の通り、顧客とSIer間では何かにつけて合意形成が必要です。そして最終的には顧客側の判断が必要な場面がいくつもあります。例えば構成を決める時、設定値を決める時、運用上の判断をする時・・・等々。

SIerの本音としては『xxの部分はどうしますか?』→『○○でお願いします』と答えてくれれば一番楽です(方針決まれば後は粛々と進めるだけなので)。しかし実際はそう簡単ではなく、選択肢を提示しても良し悪しが分からず判断できない事が多々あります。

このタイプの顧客担当者は各項目を細かく知りたい訳ではなく、『結局の所どれが一番良いの? 結局何をすれば良いの?』と思っている事が大半です。正直細かい話はその後でも良いです。最低限同じ土俵に立たないと会話にすらならないので、まずはざっくりで良いので噛み砕いて内容を教えてあげましょう。

エンジニアとしてはつい技術的な話や方法論に傾倒しがちですが、ユーザ目線で会話することが重要です。例えば
『天井の無線APから802.11acの電波を送信し50台のデバイスが同時接続可能です。』
という言い方では難しいので
『無線環境を構築すればユーザが会議室など自席以外でPCを利用可能になります。

と言ったようにユーザの業務に近い言い回しの方がイメージしやすいですし、何をするのか理解も進みます。

また、選択肢が複数有り顧客側に選んでもらう必要がある場合は是非ともSIer側からオススメの選択肢を教えてあげましょう。顧客からすればそうしたプロの意見は聞きたい内容です。言い方は色々なパターンがあります。

一般的な観点での推奨:

『他顧客ではxxを選択するケースが多い』という言い方です。他の人が選んでいると聞くと耳を傾ける事はあるかもしれません。

決して早めに決めるために無理やり誘導しようという事ではなく、多くの人が選ぶからには理由があるのでその理由を説明しつつ、その理由が納得できるのであれば実績も多数あるので良い選択肢ですよ、という趣旨で伝えるという事です。

中間選択肢:

『松竹梅3パターンあると中間の竹を選ぶ傾向がある』という内容です。

これは例えばライセンスのグレードなどで良くあります。上位グレードのライセンスにするほど機能が増えるが費用も上がります。ある程度使ったことがあれば機能の取捨選択もできるので必要なライセンスも選択できますが、全く使った事がない場合大抵判断に迷います。

その場合グレード別に松竹梅と3パターン提示すると心理的には竹を選ぶ傾向があります。いきなり松は豪華すぎるし全機能使うかも分からない、梅は機能が足りなくて後々困ったらどうしよう・・・といった心理も働き中間の竹は無難な選択肢として選ばれやすいのかもしれません。

もちろん顧客の要件を確認した上で適切と思われるグレードがあれば伝えて良いですが、逆に要件的にはどのグレードでも良い、必要が出てきたら後で変更すれば良い、といった状況であれば提示の仕方の一案として覚えておいて良いでしょう。

個人的な推奨:

『個人の経験や好みを添えて提示する』というやり方です。

例えば、この機器はバグが多くメーカサポートが弱いのでオススメしない、この機器は管理画面のUIが分かりやすく操作しやすい、等の内容です。もちろん仕事なので個人ではなく会社の見解として述べるべきという事は建前上ありますが、やはり現場では個人の好みや見解の話も出てきます。公には言えない、“ぶっちゃけ”な意見は顧客担当者側から見ても参考になる事はありますし、導入後の運用(顧客担当者の実業務)まで関わる内容であれば欲しい情報です。そういった個人的で正直な意見も顧客担当者の重要な判断材料になるので少し織り交ぜてみるのも良いでしょう。

どのパターンにしてもポイントは、顧客側で判断に足る十分な知識が無いのであればSIer側で背中を押してあげよう!ということです。深い議論ができるのであれば検討の時間は意義がありますが、分からない状態で過ごして居ても時間の無駄ですし後続の対応へも響きます。どんなに足掻いても最後は決めないといけません。顧客側が持っている不明点や不安は解消した上で判断してもらいましょう。

ポン先生

当然だけど、都合の悪い部分を隠して判断を誘導するのはNGだよ。後々トラブルになる可能性があるし、長期的な視点で顧客の為を思うなら良い部分も悪い部分もちゃんと提示した上で判断してもらう事が大切だね!

SIerは〇〇です

一般的にSIerはサービス業と言われています。ここで言う所の“サービス”は色々ありますがひとつは『ITシステムによって提供される機能』という意味合いがあるでしょう。これは言葉の通りで、例えばGoogle社のGmailなどがあります。

もちろん、こうした機能もサービスの一部なのですが、この記事では『SIer = サービス業 = 接客業』という捉え方をしています。時には顧客担当者の様子を伺い人によって言い方やレベル感を変え円滑にプロジェクトが進むように調整する、といったスキルが必要になるのです。

大げさに接客と書きましたがそうした、IT以外のスキルも総合的に必要になる仕事だと言うことは覚えておきましょう。世の中ではコミュニケーション能力というとても都合の良いふわっとした言葉がありますが、SIer目線で言うとコミュニケーション能力とは上記のようなスキルが該当します(もちろん他のシチュエーションでも該当する内容はありますが)。どんなに技術力が高く資料作成が早いエンジニアであっても、説明が機械のような定形文の羅列、自分の言いたい事だけ言う一方的な押し付けではうまくいきません。接客業をしている位のつもりで、顧客目線・ユーザライクを忘れずに行きましょう!

まとめ

ポイント
  • 顧客担当者のレベル感を把握しよう

  • 顧客担当者のレベル感に合わせた会話で合意形成しよう

  • タイプ1:能力的に自前構築できるが外部SIerへ依頼

    • 顧客担当者の実現したい内容を実現すること

    • 高いスキルやナレッジをもって、より良い提案や指摘をすること

  • タイプ2:能力的に自前構築できないので外部SIerへ依頼

    • なるべく分かりやすく噛み砕いて伝える

    • SIer目線でのオススメを提示する

  • SIer = サービス業 = 接客業

今回は顧客との接し方、顧客のタイプ、タイプ毎の求められることをまとめました。顧客担当者と直接会話する立場のエンジニアを想定した内容ですが、紐解いていくと別にSIer⇔顧客の関係だけではなく、日常会話でやるような内容もあります。かなりざっくり言うと、相手に合わせて会話しましょうという事ですし、それを意識する場面はいくらでもあります。ただ、いざ構成の話や技術関係の話になるとできなくなるエンジニアが一定数いることも事実です。正確に説明しなくてはと考えるあまり逆に伝わりにくくなってしまう事もありますが、何のための説明なのか、何を求められているのか整理した上でSIerとしての仕事に臨むと良いでしょう。