【エンジニア作業費】見積もりとは ~金額が決まる3つの要素解説~

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顧客からスイッチリプレイス作業の依頼が来ていて、見積もり提示が必要なんだ。でも見積もりってどうやって作るのかよく分からないわ。

チャーチルさん

ポン先生

最初は見積もりと言ってもどうすれば良いか分からないよね。今日は見積もり、特に金額について一緒にポイントを勉強しよう。

エンジニアとしてある程度経験を積むと技術的な話だけでなくお金の話、つまり見積もり対応をする必要があります。しかし、金額の決め方が良く分からない人もいるのではないでしょうか。この記事では見積もり(特に作業費)の金額を決める際の基本的な3つのポイントを解説します。見積もり作成初心者エンジニアは是非参考にしてみてください。

前提

見積もりとは

そもそも見積もりとは何でしょうか?見積もりとは購買活動における金額や期間、条件等が記載された資料の事を言います。例えばスイッチの導入案件の見積もりであれば、購入するスイッチの費用、導入作業でかかるエンジニアの稼働費用、作業内容等が記載されています。

SIerから顧客へ見積もり提示

顧客からSIerへ発注

受注後SIerは具体的な作業に着手

という流れです。

見積もりは事前に提示している事が重要です。作業が完了した後に作業費用提示だと、『え、そんなにかかるの?』という事にもなりかねないですしトラブルの元です。『この作業内容・条件でこの金額です』を事前に合意するためにも見積もりは必須という訳です。

この記事の内容

見積もり金額の内訳としては主に以下になります。

見積もりの内訳
  • HW費用(HWを購入する案件の場合)
  • HW保守費用(HWを購入する案件の場合)
  • サービス利用料(サービス利用する案件の場合)
  • エンジニア作業費用(エンジニアが稼働する分の費用、技術料)
  • その他(出張費用、雑費等)

この記事では、エンジニア作業費用の部分に関して解説します。また、基本的には個別の請負案件を想定しています。なお、会社によっては細かい取り決めやルールがあると思うので実際の見積もり作成に関してはそちらを優先してください。この記事ではあくまで一般的・汎用的な考え方の解説という位置付けです。

結論:金額の決め方

結論としては、作業費用は下記の様に算出します。

作業費用=単価×工数+リスク費用

要素としては単価・工数・リスク費用の3つです。詳細は後述しますが業界全般的に上記のようなイメージです。

単価

単価とは

単価とは単位時間あたりの価格のことです。例えば1日あたり8万円、1ヶ月あたり120万円といった数字です。単価は担当するエンジニアや作業内容のランクで決められるケースが一般的です。

単価の決まり方

例えば給料25万円の平社員と給料40万円の課長とでは、後者の方が単価が高いのは何となくイメージできると思います。

また、作業内容ベースで見ても、作成済みconfigをスイッチに流し込むだけの役割と、案件全体の管理や顧客との折衝をする役割とでは後者の方がランクが高い(難易度が高い)とされるため高単価に設定します。

このように給料の高い人や難しい作業ほど単価も高いというのがベースです。ただしこれは表現の違いだけであり、実質同じ事とも言えます。現実的には、案件全体の管理を給料の安い人(=例えば新人)がやることは殆どなく、ある程度経験のある人(=それなりの給料の人)が対応するので人のランクと作業のランクはある程度一致します。

作業内容と単価
  • 難易度の低い作業→低単価(費用の安価な若手などの人材を想定)
  • 難易度の高い作業→高単価(費用の高価なベテランなどの人材を想定)

という傾向がある(というだけで必ずしもそうとは限らない)

一方、見積もり段階ではその案件が受注できるかどうかも未確定であり、(見積もり作成者の頭の中での想定はあるかもしれませんが)特定のエンジニアがその案件用に確保されていないケースの方が多いです。そのため見積もり上の単価は人ではなく作業内容のランクによって決める方が現実的でしょう。

作業内容に関わらず単価は一律というルールの会社も見たことがあるよ。その辺は会社毎の考え方がありそうだね。

チャーチルさん

工数

工数とは

工数とはその作業にかかる時間×人数の事です。例えばスイッチへのconfig流し込み作業を1人で8時間(ここでは1日=8時間で想定)でやった場合は、1人×1日=1人日です。数日レベルであれば“人日”、数ヶ月レベルであれば“人月”という単位で表現されます。

ポイントは工数は作業時間ではなく作業ボリュームを表しているという点です。例えば上記の作業は1人だと8時間かかりましたが2人がかりで4時間でやっても2人×0.5日=1人日です。つまり人日は『○○人だと××時間かかるボリュームである』と言っているだけで実際にはそれを1人でやっても複数人でやっても良いのです。

※人によっては人日(にんにち)ではなく人工(にんく)と言ったりします。意味は同じです。

ポン先生

実際のところ、上記のような人手が必要な作業であれば単純に複数人で割るという考え方はできるけど、案件管理や設計などの頭を使う系のタスクになると特定の人が専任になるケースが多いね。

工数の出し方

では工数はどのように算出するのでしょうか。

会社によってはある程度の指標があるかもしれませんが、特にない場合は過去類似案件の実績見積もり作成者の想定に基づき工数を算出していきます。要は『この作業であれば××人日位かな』ということを積み重ねていきます。

当然ですがこれは案件の要件に大きく依存します。例えば以下のような要素です。

  • 案件の期間
  • 作業対象機器の台数
  • 作業回数
  • 作成ドキュメントのボリューム

見積もり作成者はこういった情報を精査し最終的な工数を算出していきますが、実はかなり難しい仕事です。基本的には見積もり作成者の裁量ですし、様々な要素で工数はブレます。

経験・顧客環境の把握度

自身で経験豊富な作業であり、かつ顧客環境も把握していれば高い精度で工数を算出できますが、そうでない場合は想定と実績が大きくズレる可能性があります。

本人の性格

エンジニアとしてのスキル以外にも本人の性格も多少は出てくるので、心配性な性格であれば工数を多めに積むし、楽観的な性格であれば工数は少なめになる、といった傾向も出てきます。

見積もり作成者と案件担当者のスキルの乖離

『見積もり作成はベテラン→実際に作業をするのは若手』というパターンも注意が必要です。ベテランは自分の感覚で、この作業なら2日でできると思って見積もりを作成しても、若手は初めてやる作業なので4日かかった、というケースも珍しくありません。

このあたりは個人のスキルや経験値に依存するのでどうしようもないです。問題点はスキル差がある事ではなく、スキル差がある前提で工数を見積もっていない点です。確実に自分がやる案件で無い限りは、(自分よりもスキルが低い)他のエンジニアが対応する前提で工数を算出する必要があります。

工数算出の精度を上げる方法

このように工数の算出は見積もり作成者の裁量に依存する要素が大きく非常に難しい業務です。ではどうすればその精度を上げる事ができるのでしょうか?答えは以下3点です。

工数算出の精度を上げる方法
  • 普段から作業にかかった時間を意識する
  • 普段から作業の見積もり金額を確認しておく
  • とにかく実務(案件)をやりまくる

つまり若手の時から自分の手で案件をこなし、その案件にどの程度時間がかかったのか、費用はいくらなのか、この感覚を身に着けて行くしかありません。

単純に技術的な知識があれば精度の高い見積もりを作れる訳ではなく、自身の作業経験が必ず必要になります。

  • この作業は事前準備で相当時間がかかるなぁ~
  • この作業はここがトラップだなぁ~

といった事が明確にイメージできると、その分工数見積もりの精度も上がります。いきなり見積もり作成ができる訳ではなく、実務経験の積み重ねの先であるという事は理解しておきましょう。

リスク費用

リスク費用とは

作業費用算出時に注意したいのがリスクヘッジです。例えば見積もり金額が50万円、実際の稼働が70万円分だった場合、20万円の赤字です。『実際には70万円かかったので追加で20万円ください~』と言っても、顧客側に何かしらの非があった、途中で追加要件があった等正当な理由がないと中々難しいのです。

ではどうするかと言うと、見積もりにリスク費用を上乗せてしておきます。要は『見積もり時には想定していなない事象が発生した場合に吸収するための費用』です。この記事では便宜上+リスク費用と記載していますが、元の費用+○○万円だったり、元の費用×○○%だったり、工数を多めに積んでおくだったりケースバイケースです。具体的な数字は案件によりますが概ね以下のような傾向があります。

リスク費用の傾向
  • 案件規模が大きいほど、リスク費用も大きくなる
  • 実績のない案件ほど、リスク費用も大きくなる
  • 不確定要素が多いほど、リスク費用も大きくなる

つまり良く分からない案件ほど、ある程度金額を積んでおく必要があるという事です。ここの裁量は非常に難しいところで、上乗せ分が少な過ぎれば赤字になる可能性がありますし、多過ぎると顧客側から高額な印象を持たれ最悪は失注につながります。これに関しては正解は無いですし、必要に応じて見積もり作成者が営業・上司と相談して決めて行くしかないです。

いずれにしても、正直な費用(=最低限必要な費用)と顧客向け提示金額(最低限+上乗せ分の費用)は違うということは認識しておきましょう。

まとめ

ポイント
  • 作業費用=単価×工数+リスク費用

  • 単価

    • 単位時間あたりの価格

    • 人や作業内容での変動もある

  • 工数

    • その作業にかかる時間×人数(作業ボリューム)

    • 想定工数は案件毎に算出する

    • 見積もり作成者によってブレ幅がある

    • 工数見積の精度を上げるには作業の経験をたくさん積むこと

  • リスク費用

    • 想定外稼働に備えて積んでおく費用

    • 案件規模、実績、不確定要素によってどの程度積むか変わる

案件対応や技術的な分野の方が好きで、お金のことはあまり触れたくないというエンジニアは一定数います。むしろ多いかもしれまん。しかしそれなりの年次になれば必ずやる必要が出てきますし、当然ですが売上がないと会社としては存続できません。費用を決めることはその作業の価値を決めることです。作業に対して自信やがあるのであれば見積もりも堂々と自信を持って出して行きましょう。